ちばてつやの「風のように」について

 以前の日記で、ちばてつやの『わたしの金子みすゞ』について、触れたことがある。最近、『風のように』という短編作品が2022年に久志本出版から刊行されていることを知った。「風のように」は1969年に『週刊少女フレンド』に掲載された作品である。早速、このコミック本を入手して読んだ。

久志本出版『風のように』2022年  短編6作品収録 ふしぎコミックス 


 その後、この作品が映画化されていることを知った。このアニメ作品は2016年に、アニメ制作会社のエクラアニマルによって制作・公開された『風のように』(42分)という短編映画である。優れたスタッフ、キャストが協力して作り上げた芸術作品である。 

DVD「風のように」エクラアニマル制作・販売 2016年

 山あいの村に祖母と暮らす少女チヨと、花を求めて全国を旅する養蜂家の両親を事故で亡くした少年三平との情感溢れる交流を描き、戦後初期の山村の風景や自然が鮮やかに表見されている。どんな困難にも真正面からぶつかって生きようとする三平、そんな三平を頑なに信じて手助けするチヨ。山村の子供たちや大人たちとの交流も物語に絡み、ミツバチの大群の飛来がキーワードとなり、農村の原風景をバックに話が次々と展開していく。 

 映画には原作にはなかった場面が所々に挿入され、新たな映画作品として仕上がっている。また、エンディングも原作とは異なり、余韻を残し、想像力をかきたてる形で結ばれている。ミツバチとともに消えた三平の帰りを待つチヨ、10年後のチヨと三平が開墾し、チヨが育てた花畑がクローズアップされて映画は幕を閉じる。

この映画はDVDとして発売されており、原作と一緒に、ぜひ鑑賞してほしい作品である。映画に流れる音楽、主題歌、効果音が作品をより豊かに彩っている。音楽はサウンドトラックとして、CDにもなっている。