シンガポール華僑中学の記念メダル

  連休を利用して書斎の片づけをしていると、本の隙間に一枚の記念メダルがあった。表には「新加坡華僑中学」の創設者陳嘉庚(タン・カーキー)の肖像が刻印されおり、このメダルは創立75年を記念して作られたものであった。

創立75周年の記念メダル(表) 1994年

創立75周年の記念メダル(裏) 1994年



どこで入手したものかと思い出してみると、それは私がシンガポールで調査旅行をしている時に、お世話になった潘明智先生からいただいたものであった。知り合ったころは、潘明智先生はシンガポール宗郷会館聯合総会雑誌『源』の編集の仕事をされていた。当時、彼の執務室は福建会館の中にあった。潘明智先生は南洋大学で地理学を専攻し、その後日本の東京教育大学大学院で地理学を学んだ。帰国後は南洋大学地理学専攻の助手、小学校の教員、「華僑中学」の校長を歴任した。

  この「華僑中学」はシンガポールの大華僑(ゴム園で蓄財)陳嘉庚によって、1919年に創立された初の華文中学校であった。陳嘉庚は愛国華僑と呼ばれ、故郷福建省の教育事業に多大な資金を提供し、抗日運動にも参加したことで知られている。

   潘明智先生は親切で気さくな性格の先生であった。シンガポールのチャイナタウンに精通し、生き字引のような存在で、日本のTV番組にも出演し、チャイナタウンの食文化について、解説をしていたことがあった。潘明智先生はシンガポール華人会館の歴史についての論考や日本の学術論文の翻訳などを多数発表され、著作も公刊されている。代表的な編著書に『華人社会与宗郷会館』がある。定かではないが、マレー半島東海岸出身で、マレー語も堪能であった記憶がある。

華人社会与宗郷会館 1996年