マレーシアの華文中学を訪ねて

 マレーシアは東南アジアの中で、最も華語教育が維持されている国である。マレーシアの公教育では国民型華文小学校で、華人の子どもたちは華語で授業を受けることができる。卒業後も華語教育を継続するには、独立華文中学と呼ばれる私立中学(高校も含む)へ進学することになる。独立華文中学は華語文化の存続、発展を目的とする一方、他の民族の言語文化を教育し、文化の交流融合を深め、全民族の特徴を反映したマレーシア文化の創造を教育目標にしている。独立華文中学は、全国で61校ある。

華文独立中学の分布図 

私が訪問した学校は、そのうちの十数校である。それぞれ学校の歴史、現況を聞き取り、その後校舎・寮見学、授業参観または在学生たちとの交流などを行った。

クアラルンプールにある中華独立中学 大規模校で生徒数5,098人(2021年統計)

 ペナンの韓江中学には三度訪問したことがある。最初に訪問した時の校長はマレーシアを代表する華文作家方北方氏であった。知り合いとなった後は、資料収集、研究などで大変お世話になり、手紙での交流も続いた。

 最も印象深い独立中学はマレー半島東海岸ケランタン州コタバルにあるケランタン中華独立中学であった。東海岸は西海岸と違って、マレー人が圧倒的に多く、華人は極少数派であり、マレー語ができないと生活できないし、就職・進学に不利である。この地域に華語の私立中学が存在、維持されていることに驚きであった。学校はコタバル市内から西北へ21km離れた場所にあり、完成されたばかりの新キャンパスを訪問できた。梁育堅校長への聞き取りや在学生たちとの座談会はとても有益で、マレー人多数派の東海岸で生活する華人の子どもたちの生活や言語環境、華語と華人文化の継承などについて、意見を交換することができた。

 クランタンに三泊したあと、車で南下し、クアラトレンガヌ、クアンタンに、それぞれ一泊し、ジョホールを経て、シンガポールに戻った。途中、華文小学校を見つけると、飛び込みで訪問し、校長先生から学校の現況について、説明を受けたりした。東海岸の澄んだ海の青さはいまでも鮮明に記憶に残っている。

なお、クアラトレンガヌは、戦前マレーの虎と呼ばれたハリマオが育った街である。