山東省の芸術家について

 山東省には五回ほど訪れたことがある。旅の楽しみは現地の美味しい料理を味わうことと文化に触れることである。山東省の省都、済南には、山東省高唐県出身で現代中国を代表する画家李苦禅の紀念館がある。その紀念館は市内西龍街にある元代の伝統的建築の「万竹園」の中にある。庭園には竹林、花園、名泉、亭、橋などがある。李苦禅紀念館の展示室には、花鳥画が多く展示されていた。巨大な蓮の花、鷹、魚、蘭竹、白菜などである。白菜の絵に「世間の人は美味を知るだけで、ありふれた白菜の持つ意味をよく知らない。清貧の中から優れた人物が生まれるのであり、温室育ちの子弟に才徳の人は少ない」(大意)と一文が添えられていた。李苦禅は美術学校で絵画を学びながら、夜は人力車の車夫として働いていた。

  

李苦禅紀念館蔵画選 育雛図 1987年 

 さて、筆者は30代中頃、山東省で多くの芸術家や作品に出合うことができた。今回は二人の画家の作品を紹介したい。まず一人目は当時、山東師範大学芸術学部教授の張鶴雲氏である。張鶴雲氏は鯉、金魚の絵を得意としていて、海外での評価も高い画家であった。私も友人のM氏の尽力で、やっと手に入れることができた。

張鶴雲 鯉

もう一人は当時、山東芸術学院講師であった高延軍氏である。高延軍氏は歴史上の人物を描くことが得意で、日本でも個展を開催したことがある。私は「曹操観蒼海」と「孟子廟」を手に入れた。「孟子廟」は、私が懇願して、描いていただいた作品であり、拙宅の居間に飾っている。

高延軍 曹操観蒼海

素晴らしい作品には、やはり心を豊かにしてくれる力がある。もし山東省に行かなかったら、これら優れた画家や作品に出会うことがなかっただろう。